トレーニング時に有効とされるグルタミンですが、どのような効果があるのでしょうか。
結論からいうと、グルタミンは筋肉の分解を抑制し、合成を促進します。さらに筋肉の回復を早めたり、胃粘膜の保護をしたりなど、さまざまな効果が研究によって報告されているのです。
この記事ではグルタミンに関する理論と研究結果を元に、グルタミンの主な効果5つやグルタミンを飲むときのポイント3つについて解説します。
この記事を読めば、グルタミンの主な効果や飲む時の要点がよくわかるようになり、上手く活用できるようになるでしょう。
まずはグルタミンとはどういう栄養素なのかを解説します。
グルタミンとは
グルタミンは体内にもっとも多く存在するアミノ酸です。
アミノ酸には20種類あり、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に別れます。20種類のうち、必須アミノ酸が9種類、非必須アミノ酸が11種類です。
必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事からの摂取が必須です。一方で、非必須アミノ酸は体内で合成できます。
グルタミンは非必須アミノ酸なので、体内で合成できるアミノ酸です。なので「体内で合成できるなら、サプリメントで摂取する必要はないのでは」と考える方もいるかもしれません。
ですがグルタミンは、疲労やストレスにより大量に消費されるため、トレーニング時に必要量が増大します。そのため、トレーニング時に補給することで筋肉の分解を防いだり、回復を促進したりする効果があるのです。
ここからは、トレーニング時にグルタミンを摂取する有効性についてご紹介します。
グルタミンの5つの効果
グルタミンには主に5つの効果があると考えられています。どれもトレーニング時に嬉しい効果です。1つ1つご紹介します。
- グルタミンの効果1 筋肉の分解を防ぐ
- グルタミンの効果2 筋肉の合成を促進する
- グルタミンの効果3 筋肉の回復を促進する
- グルタミンの効果4 胃粘膜の保護
- グルタミンの効果5 腸内細菌の割合を改善
グルタミンの効果1 筋肉の分解を防ぐ
トレーニング時のグルタミン摂取には、筋肉の分解を防ぐ作用があります。トレーニングによって身体がストレスを受けるとグルタミンの必要量が上がり、筋肉からグルタミンが取り出されます。これが筋肉の分解です。
トレーニングによって筋肉は合成されますが、一方で同時に分解も起こっています。せっかくトレーニングをして筋肉を増やそうとしているのに、分解されたくないですよね。そこでグルタミンです。
トレーニング時にグルタミンを摂取することで、血中のグルタミン濃度が上がり、筋肉からグルタミンが取り出されることを防げます。つまり、筋肉の分解を防げるのです。
トレーニング時にグルタミンを摂取する人の多くは、筋肉の分解防止を主な目的にしています。
グルタミンの効果2 筋肉の合成を促進する
グルタミンには、筋肉の合成を促進する効果も示唆されています。ラットを用いた研究では、筋肉内のグルタミン量と、筋たんぱく質合成には正の関係があると報告されました。*1
つまり筋肉内のグルタミン量が多いほど、筋肉の合成が促進されるということです。グルタミンが豊富にあればあるほど筋肉の分解が防がれて、合成が促進されると考えられます。
グルタミンはトレーニングの強い味方になってくれますね。
グルタミンの効果3 筋肉の回復を促進する
グルタミンは筋肉の回復も促進すると考えられています。「トレーニング後の72時間の回復期間に、筋肉痛を低下させて筋力の回復を高めた」という研究結果が報告されました。*2
筋肉の回復が早くなれば、より短いスパンで次のトレーニングを行えるため、パフォーマンスアップも早まります。また、ハードな日程に挑むアスリートも回復を早められるでしょう。
グルタミンは筋肉の分解を防ぎ、筋肉の合成を高めつつ、回復も促進してくれます。
グルタミンの効果4 胃粘膜の保護
グルタミンは胃粘膜など、消化管の粘膜細胞の主なエネルギー源になります。そのため、胃粘膜の保護に役立ちます。グルタミンを飲むことで胃粘膜が薄くなることを防ぎ、細菌やウィルスの侵入を防ぎやすくなるのです。
グルタミンの効果5 腸内細菌の割合を改善
グルタミンは、腸内細菌の割合を改善させる効果も報告されています。肥満・太りすぎの人にグルタミンを経口補給してもらったところ、腸内細菌のバランスが改善しました。*3
腸内細菌は肥満と関係していると考えられています。グルタミンの摂取により腸内細菌のバランスが改善すれば、太りにくく痩せやすくなるかもしれません。
飲むときのポイント3つ
最後にグルタミンを飲むときのポイント3つをご紹介します。1日の摂取量やおすすめの摂取タイミングを紹介しているので、グルタミンを飲むときの参考にしてください。
- ポイント1 食品にも含まれているため5~15gで十分
- ポイント2 タイミングはトレーニング直後
- ポイント3 過剰摂取の心配は?
ポイント1 食品にも含まれているため1日5~15gで十分
トレーニング効果を高める場合、グルタミンは1日20~30gが適量と考えられています。ですがグルタミンは、大豆、肉、魚、卵など、さまざまな食品に含まれているため、サプリメントで20~30gも摂る必要はありません。
また、グルタミンはプロテインにも含まれています。トレーニング時にはプロテインを飲むことが多いことも考えると、サプリメントでのグルタミン摂取は1日5~15gがおすすめです。
ちなみにホエイプロテイン100gあたり5g程度のグルタミンが含まれています。
ポイント2 タイミングはトレーニング直後
食品なのでいつ摂取してもいいのですが、トレーニング直後がおすすめです。トレーニング直後は、もっとも筋肉の合成・分解が活発に行われているため、グルタミンの必要量も上がります。
グルタミンはアミノ酸なので、胃腸での消化が素早く行われます。摂取後、素早く血中に流れるため、効果が欲しいタイミングで飲んでも吸収が間に合うのです。
トレーニング直後にグルタミンを摂取すれば、筋肉からグルタミンが取り出される=筋肉が 分解されるのを防げます。さらに合成を促進し、回復を助けてくれます。
ポイント3 過剰摂取の心配は?
グルタミンの過剰摂取は肝臓や腎臓に負担をかけるリスクがあるものの、過剰摂取の害は特に報告されていません。ですが、多めにとっても無駄になるだけです。
なので、サプリメントからの摂取は1日5~15gに抑え、多くても1日20~30g程度にしましょう。
まとめ
グルタミンは非必須アミノ酸の1種なので、体内で合成できます。ですが、トレーニング時などの疲労やストレスがかかる時は必要量が増えるため、サプリメントでの摂取が有効です。
そしてグルタミンの主な効果は以下の5つでした。
- 筋肉の分解を防ぐ
- 筋肉の合成を促進する
- 筋肉の回復を促進する
- 胃粘膜の保護
- 腸内細菌の割合を改善
グルタミンは食事やプロテインにも含まれているため、サプリメントで飲む場合、おすすめ摂取量は1日5~15g。飲むタイミングのおすすめは、筋肉の合成・分解が活発に行われて、グルタミン必要量が上がるトレーニング直後です。
過剰摂取の心配はあまりありませんが、多めにとっても無駄になるだけなので、多くても1日20~30gに抑えましょう。
このように、トレーニングをする人にとって嬉しい効果があるグルタミン。あなたのサプリメンテーションに上手に組み込んで、競技力アップにつなげましょう。
<参照文献一覧> ・サプリメント D to K: 山本義徳 業績集15
*1 A positive relationship between protein synthetic rate and intracellular glutamine concentration in perfused rat skeletal muscle ー FEBS Lett. 1987 May 4;215(1):187-91.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2883028/
*2 The Influence of Oral L-Glutamine Supplementation on Muscle Strength Recovery and Soreness Following Unilateral Knee Extension Eccentric Exercise ー Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2015 Oct;25(5):417-26. doi: 10.1123/ijsnem.2014-0209. Epub 2015 Mar 26.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25811544/
*3 Oral supplementation with L-glutamine alters gut microbiota of obese and overweight adults: A pilot study ー Nutrition. 2015 Jun;31(6):884-9. doi: 10.1016/j.nut.2015.01.004. Epub 2015 Jan 29.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25933498/